分娩の立ち合いを終えて私はベンチでぐったりしていました。
30分ぐらい過ぎたでしょうか、看護師さんが焦った顔でそれでいて落ち着いたトーンで話かけてきました。
「生まれてきた赤ちゃんですが呼吸ができず今救急車を呼びましたのでお父様一緒に救急車に乗っていただけないでしょうか。」
「分かりました。」私は返事をしましたがよく理解できずにいました。
赤ちゃんも心配ですが私は妻が一日中苦しんでいる様子を傍で見ていたので妻の心配ばかりしていました。
更に10分後妻との面会が叶いました。
ベッドに駆け寄るとそこにはぐったりとした妻がいました。
私は妻の手を握ると妻は元気はありませんでしたがその表情は新しい命を生み出した達成感に満ちているようでした。
ほどなくして看護師さんが赤ちゃんを連れてくると言い、何やら台車を運んできました。
そこには”たくさんの管が繋がれた紫色の赤ちゃん”がいました。
私はそれが自分の子供だと知らされ正直怖くなりました。
最初に妻に、次に私に赤ちゃんを抱かせてくれましたが自分で動く様子はなく生きていると思えないよう私の眼には移りました。
忙しい一日にいろいろと思いを巡らせるうち遠くで聞こえていたサイレンの音が段々と大きくなり部屋の外で止まると周りは忙しくなり、妻を置いて私は赤ちゃんと一緒に救急車に乗り込みました。
次回ゆずの歩み③へ続く